ズキン。
なんか、いま胸の中で鈍い音がした。
「そ、そうなんだ……」
自分でもビックリするほど乾いた声がでた。
渉に、彼女……。
その事実だけが、頭のなかをグルグル回って……。
「あ、ちなみに俺はフリーだから、もしよかったら!」
斗真くんは、そんなアピールをしたあと
「あ、でも無理だよね」
"ルール"のことを言ってるのか、ペロッと舌を出してから笑った。
冗談だって分かるけど、それに突っ込むこともできなくて。
「じゃ」
と、軽く手をあげて去って行った斗真くんに、なんのリアクションも返せないままだった。