「……これ見たらわかるでしょ」
あたしは反対の手に持っている、小春から渡されたビニール袋を掲げた。
「ホントは、あんたの分はほかにあったの。でも……」
「でも?」
「お弁当をつくってるところをお兄ちゃんに見られて……」
「それで?」
「自分のだって勘違いされたの。だからそれをお兄ちゃんに渡すしかなくて、あたしのを、あなたのにしたんですっ」
「ふうん。それでこの少女趣味か」
渉は、ピンクのランチマットで包まれてる謎が分かったようだけど。
「べつに、彼氏に弁当作ったとでもなんとでも言えばよかったんじゃねえの?」
「……」
軽くそんなことを言う渉に腹が立った。