そんなあたしを横目に、渉はシレッと言った。
……ホントに、それだけ……?
「大声出してどうしたんだよ、乃愛」
圭太が怪訝そうに、あたしの手を引っ張る。
「……なんでも、ない……」
あたしの早とちり……?
……一人で大声なんて上げちゃって、バカみたいじゃん。
バツの悪いあたしに、渉が繰り返す。
「隣の席の子には、優しくしないと。ね、」
「……」
……絶対ちがう。
あたしの反応を楽しんでるんだ!
脱ぎ魔だの、ファーストキスだのっていう弱みがあるからって。
瞳の奥に、イジワルなたくらみが潜んでるのが、あたしには見えた。