そして……
口紅でも塗ったかのような、血色のよい艶やかな唇……。
「……っ……」
あたしはその唇から、再び目が離せなくなった。
渉を妖艶に見せるのは、この唇のせい?
艶っぽくって、変な意味じゃなくて、芸術的なエロスみたいなものを感じて。
唇の形状は薄いのに、主張するには十分すぎるほどの材料がそろってる。
そんな奇跡の唇が、あたしの唇に……。
記憶と記録から抹消しようと決めたばっかりなのに、いま目の前にあるってなると、そうもいかないのが現実で……。
むしろ、ドキドキが増す。
変な熱が、あたしの体を侵食していく……。
「一之瀬、どうした」
「へっ!?」
ハッとして顔を上げると、すぐ真横に先生が立っていた。



