そのとき、渉の前の席の男子が振り返ってあたしを見た。
ギョッとしたような顔で。
そのまま渉にも視線を注いで……また前を向く。
……あたしに話しかける渉が物珍しいのかも。
「つうかさ、コレぜんっぜんわかんね。ちょっと見せろよ」
「ええっ!?」
渉はあたしの腕をひょいとあげて、プリントを見ようとした。
「ちょ、ちょっと……」
急に触れられた腕に、戸惑いが隠せない。
「あたしも合ってるのか自信ないしっ……」
「こんなに解けてんじゃん」
「でもっ……」
隣の男子にプリントを見せてあげるなんてのも初めての経験で。
すんなりどうぞ、なんていう適応能力はない。