「な、に……? これは……」


 天井も壁も床も鉄で出来た、ところどころ赤錆が目立つ、薄暗い気味の悪い部屋。空気が悪い。

 蛍光灯の明かりのおかげで、部屋全体を把握することは出来るけれど……それでも心もとない明るさ。こんな部屋、僕は知らない。来たことも見たこともない。

 唖然としていると、誰かにバカにするように笑いながら暴言を吐かれる。


「目覚めるのがおせーよ、ノロマ」


 聞き覚えのある嫌悪感を催す声。そちらの方を向くと……案の定、狼谷くんがいた。壁にもたれ掛かる形で、右膝を立てて座っていた。

 ……いや、違う。この場にいるのは狼谷くんだけじゃない。辺りをゆっくりと見渡していき、気付く。この部屋には、僕のクラスメートが〝全員〟いる。

 みんなも、眠っていたけれど僕と同じように起きたのか、すでに床に寝転がっている人はいなかった。

 この異様な部屋の中で俯いていたり、怯えていたり、ぼそぼそと会話をし合っていたり──。


「これってもしかして誘拐? 俺達、さらわれたんじゃねっ?! やっべ、ちょっとドキドキするんですけど?!」


 ──馬鹿くんみたいに、ワクワクしていて嬉しそうだったり。……って、見たところ、嬉しそうなのは馬鹿くんだけ、だけれど。


「ちょっと、バカ!空気を読みなさいよ、空気を!」

「はぁ? 空気は読めないし、そもそも見えないぞ? っていうかバカじゃねぇ!ウ・マ・シ・カ、だ!」


 馬鹿くんの態度が不謹慎だと思った如月さんが、馬鹿くんに注意した……のだけれど、馬鹿くんには通じていないみたいだ。