──人狼(じんろう)

 遺伝か感染か、はたまた突然変異か……彼らはどこからともなくやってきて、この世の中に当たり前のように混在する生物の一種だ。

 見た目は人間と変わらない。……モノの見方や捉え方、考え方なんかは、人間と同じように十人十色なのかもしれないが。


 人間と人狼の違いとして、まず、彼らは人間を食料のうちの1つしか見ていない。肉ばかり食う彼らにとって、人間の肉は最高級に美味なんだそうだ。

 それから、自己再生能力が備わっている。人間よりも遥かに傷の治りが早い。下手をすれば心臓を一突きするだけでは死なないかもしれない。


 そして、圧倒的に人間と違うところは──。


 人狼が人間を襲う時、人狼の象徴ともいえる耳や尾、爪や牙が生えてくるということ。──いわゆる、人狼の真の姿だ。

 この姿の時の人狼は、人間を装っていた時よりも凶暴で、非常に危険。そう簡単には死なない。


 そんな彼らがこの世の中に混在しているだなんて、僕は今でも信じられない。信じたくない。

 ──しかし、そんな僕を置いてきぼりにして、彼らは本当に混在し、存在するのだから、渋々信用せざる得ないわけなのだが。


 今日もどこかで人間は人狼に襲われ……また、人狼を狩る特殊部隊──通称、Special unit hunting werewolf.(スペシャルユニット ハンティング ウェアウルフ)……【SHW】が街を歩いているのだろう。

 何はともあれ、今日も僕は訪れることのない平和を願うばかり。

 〝どうして〟、〝いつから〟、世の中はこんなことになってしまったのか……それを知る者は、誰もいないのだ。


 ──ああ。

 今日もどこかで、凶暴な人狼は人間の血肉を食らい、その〝(せい)〟を謳歌している。