正直、放っておいてほしい気持ちもあるけれど、彼女の気持ちを無下に扱うのは酷な気がしたので、僕はそっと微笑んでお礼の言葉を口にした。


「相談ぐらいなら乗れるから……!だから、何か困ったことがあったら、遠慮なくいつでも言ってね」


 相談……か。

 いきなりそんなことを言われても困るし、気遣ってくれるのは嬉しいけれど、いくら大上さんに相談したって、足掻いたって、死んだ魂はもう……二度と戻って来ないというのに。


「うん、ありがとう」


 僕は無理矢理に笑顔を作って、もう一度だけそうお礼の言葉を口にした。


「弥生~!」


 友達に呼ばれた大上さんは、口早に「それじゃあねっ」と言うと、そちらの方へ駆け寄っていった。

 ──ああ、久々にクラスメートの誰かと会話をしたような気がする。

 前に会話したのって、いつだっけ。思い出せないほど過去のことなのか、思い出すに値しないことなのか……なんにせよ、楽しい会話をしたわけじゃないのは、確かだ。

 まさか、久々に会話をしたのが、風子が死んだあと──しかも、風子の死がキッカケだなんて……ね。心の底から喜べないや。

 猫山中学校も、猫塚高校も、今日1日……いや、1週間くらいは、風子の話題で持ち切りなのかな。精神的に風子の話は聞きたくないのに、どうしてみんな、こうも残酷なんだろう。


「風子ちゃん、かわいかったよなぁ」


 不意に、クラスメートの男子生徒──狼谷 勇樹(かみや ゆうき)くんの声が耳につく。

 狼谷くんは乱暴且つ横暴な人で、色々と要注意な人物。僕も何度か暴言を吐かれ、殴られたことがある。先生でさえ手をやいていて、ことあるごとに悩んでいる様子なのを見たことがある。