「10分で行く。
直ぐに出られるようにしておいて…」

冗談やふざけた声じゃない。
いつもと違うのは、
用件を聞いて、須田さんも
直ぐに重要な証言だとわかったからだ。


店の前の通り、車を止めやすいところで、待ってて。


須田さんにそう言われ、
私が道路脇で須田さんを待ち、
実加が奥田さんに付き添った。

本当に須田さんは、10分で現れ、
私の顔を見ると、
「経理の子は?」と尋ねる。

私が、振り向くと実加は、既に奥田さんを連れ私の横に立っていた。

「奥田さん?」

「はい」
しっかりした声だ。

「ちょっと話を聞きたいから、
家まで来てくれる?」

「はい…」

須田さんは、優しく彼女に寄り添うと、
もう大丈夫だからと背中に手を寄せる。


「私達は?」実加が尋ねる。


「君は一人で大丈夫だね?」
須田さんが奥田さんに尋ねる。


奥田さんがうなずく。



「ありがとう」

須田さんは、それだけ言うと、
彼女のことを気遣いながら
車の中に消えていった。