「あなたなら、知ってるんでしょ?
西川の居場所」

仁志さんは、またかという顔で
「元気でいるって。信用しろよ」


「須田さんはなぜ、
この人のことを知ってるの?」


「私たち、会社の同期なの」
陽子さんの方が答える。
この年の同期はきっとスゴいだろうな。


「須田さんは、西川さんとは?」


「課長は、
会社に入った時、指導してくれた先輩」


「世話になったのよね?西川に」


「そのことと、今回の事は関係ない。
とにかく、大人しくしてろ、
大事な時だろ」


ふ~ん、知ってたんだ。
仁志さんは、陽子さんを部屋から追い出した。

彼は、
無理矢理タクシーに乗せて来たのか、すぐに帰ってきた。

体格のいい男が腕組みすると、
結構な迫力だ。完全に通せんぼするつもりらしい。

「さてと、どういうつもりだ?西川の妻なんかに会ったりして」



「一応、会いたくないとも言ったし、会っても意味はないと伝えたよ」

西川さんが選んだ人を一度見たかった。
理由はそれだけだった。仁志さんの機嫌を損ねさせるためでは、決してない。