車の中で、私たちは付き合っていた頃の思い出話で盛り上がった。

一緒に携帯電話を買いに行った時、私のピンクの機種はその場で受け取れたけれど、奏太のネイビーの機種は人気で在庫が切れており、後日取りに行ったこと。

二人で携帯ショップへ出掛けていたところを学園の生徒に見られたことがきっかけで、私たちの関係がバレてしまったこと。

定期テストのとき、なぜか年下の私が奏太や彼のグループのみんなに勉強を教えていたこと。

そのおかげで進級・卒業ができたと感謝されたこと。

楽しかったあの頃の話をしていると、あっという間に私の住むアパートに到着した。

「ありがとう。助かりました」

「また明日。車の修理の進捗はまた連絡する。おやすみ」

「おやすみなさい。気をつけて」

微笑み、助手席の扉を閉める。

シルビアは控えめに唸り、ゆっくり走り出した。

角を曲がるまで見送りアパートの階段を上っていると、マフラーの音が大きくなったのが聞こえた。

奏太が大通りに出たのだろう。

夜中ということもあり、スポーツカーなりの音が住宅地で迷惑にならないよう、気を使って運転してくれていたらしい。

そういう配慮ができるところが好き。

着ている服に付着した芳香剤の移り香が、たまらなく愛しい。

自宅に入るなり、私は自分の体を抱き締めて久しぶりの恋の感覚を噛み締めた。