あてもなく車通りの少ない町を走る。
少し変わったけれど懐かしい景色が広がり、私たちの母校が近いことに気づく。
奏太とお揃いの携帯を契約しに行った携帯ショップは、建物がリフォームされてコンビニになっている。
「やっぱり梨乃には敵わねーなー」
奏太がポツリと呟いた。
「敵わない?」
「由美のこと。自分で何とかしたかったのに、梨乃がサックリ解決したじゃん」
「そんなことないよ」
上司が抱えていた案件が偶然彼女にマッチしていただけで、私が特別に何かしたわけではない。
あえて挙げるなら、これからしばらく勉強に付き合うことくらいだ。
赤信号で車を止める。
「俺、結局何もできなかった」
「私たちに起こった問題なんだから、二人で考えて、二人で解決したってことでいいじゃん」
「でも、由美のことは梨乃と会う前に始まったことだし」
「再会する前のことでも、今は二人の問題でしょう? 奏太はカッコつけようとしすぎだよ。私、守られることばっかり考えてる弱い女じゃないからね」
強気でそう言い切ると、奏太は困ったように笑った。
「まったく、彼女が男前すぎて、俺は形無しだよ」
突然シートに預けていた頭をグイッと引き寄せられ、勢いよく唇を奪われた。
停車はしているけれど、運転中にキスなんかされたのは初めてで、途端に心臓が暴れだす。
ハンドルを握りブレーキを踏んだままの私は、ただその甘美な感覚に酔うしかない。
彼の唇から解放されたのは、正面から差し込む信号の光が青になったタイミング。
後続車がいないのをいいことに、青信号だが発車せずに見つめ合う。



