「カズ、違うよ。このお姉ちゃんはママのお友達」
「おともだち? じゃあどうして泣いてるの?」
彼は疑っているのか、由美先輩と私の顔を交互に見る。
そして最後に、答えを求めるように奏太を見つめた。
「カズ、ほんとだよ」
奏太が答えると、少年は安心したように眉を下げる。
由美先輩はカズくんの頭を撫で、意を決したように顔を上げた。
「コバリノ。あたし、ひとつ訂正したい」
「何ですか?」
「この前、この子の父親のこと、勢いで“あんな男”なんて言っちゃったけど、本当はすっごくいい人なの。あたしがモトを亡くしたこととか、忘れられないこととか、全部受け入れてくれて、それでもいいって言ってくれて、支えてくれて。だからあたしも彼を好きになって、結婚したの」
だったら、どうして別れたりしたの?
さすがに子供のいる前で聞いていいのか躊躇し、口に出せない。
察した彼女が言葉を続ける。
「でも彼、本当は無理をしてたんだと思う。あたしがモトを忘れられないこと、“いいんだよ”って言いながら、心では“嫌だな”って思ってたんだと思う。何年か経つうちにそういう我慢が重なって、すれ違うようになって、夫婦としてはうまくいかなくなって。別に嫌い合って別れたわけじゃないから、円満離婚だし今でも連絡は普通に取ってるけどね」
「そうだったんですか……」
少しだけホッとした。
もしかして由美先輩は、モト先輩を忘れるために適当な男と結婚し、それが酷い男で逃げるように別れたんじゃないか……なんて想像したこともあった。
そうでなくてよかった。



