くるまのなかで


しかし私は今日、彼女の救世主になるつもりで来たのだ。

私はコーヒーのカップをよけて、持ってきた封筒から資料を一枚取り出し、由美先輩が読みやすい位置へ。

そしてその横に、私の名刺を置いた。

「梶浦由美さん。今日はあなたをスカウトしにきました」

「は?」

私の申し出に、彼女は眉間にシワを寄せ首を傾げる。

私はスッと資料を彼女の方に滑らせた。

資料には全国的に人気を得ている地元の通販型オーガニック化粧品メーカー『ブルーメ』のロゴが入っている。

「この度、弊社はブルーメのコールセンターと直売店の業務を委託されることになりました」

コールセンターの方は前々から枕木チーフを含む上層部が慎重に準備をしてきたが、直営店の委託は今月に入って急に決まったらしい。

11月のオープンが決定しているため、もう時間がない。

今すぐにでもスタッフを採用し、教育する必要がある。

チーフの言った“無茶振り“とは、この直営店のことだった。

「直営店? ブルーメって、たしか通販オンリーだったと思うんだけど」

「試験的に県内と東京、名古屋に3店舗オープンします。この3店舗がうまくいけば、以降、全国に店舗展開していくことになります」

「じゃあ、スカウトって……」

「県内直営店のオープニングスタッフです」

労働条件は悪くない。社会保険もつけられる。

由美先輩なら、5歳の子供がいるとは思えない美貌を活かして、存分に活躍できると思う。

是非ここで力を発揮してほしい。

そういう気持ちと期待を込めて彼女を見つめる。

しかし彼女は私をすごい形相で睨み、震える低い声をこぼした。

「……それがあんたのやり方なの?」