くるまのなかで


旧宇津木邸はよく見るタイプの住宅だった。

玄関を上がってすぐ左に2階へ上がる階段がある。

2階は全て奏太の住居で、1階のキッチンとリビング、そして風呂は共有スペース、その他の2部屋は由美先輩たちの住居にしているという。

奏太の言ったことを信じていなかったわけではないが、案外というか、本当にきっちり住み分けられているようだ。

ちょっと安心した。

カズくんがもう眠っているので、できるだけ静かにリビングへ。

奏太が扉を開けると、流れてきた空気からふわっとコーヒーの香りがした。

「いらっしゃい」

キッチンでポットを持っている由美先輩とは、私の部屋で会って以来だ。

満面の笑顔で挨拶を交わすには、まだお互いの傷が癒えていない。

「こんばんは。おじゃまします」

奏太に促され、L字ソファーに腰を下ろした。

彼自身は私の隣へ。

コーヒーを入れてくれた由美先輩と私は、90度の位置で隣り合い、向かい合う。

丁寧に淹れてくれたコーヒーがテーブルに乗った。

私たちの間のピリッと張り詰めた空気の隙間を縫うように、コーヒーの湯気と香ばしい香りが漂っている。

この間のことについては、お互いに謝らなかった。

「それで、あたしに話って?」

ツンとした態度の中に、今でも不安が含まれているのを感じる。

彼女にとって私は奏太を奪う邪魔者に違いない。