くるまのなかで





この日の夜、私は初めて奏太の住む家にやってきた。

教えてもらった住所を携帯のナビに入力し、案内に従って近くまで行くと、奏太が軒先で私の到着を待っていてくれた。

二年前まで宇津木社長が住んでいたという一戸建て住宅は、建物こそこの地域の平均的な大きさに見えるが、敷地には自動車が4台も停められる広い駐車場がある。

そこに奏太のシルビアと、7月にアウトレットで見た軽自動車が停まっている。

以前は『宇津木』という表札があったと思われる門扉のくぼみには何もなく、『徳井』の表札も『梶浦』の表札も出ていない。

私は奏太の誘導に従ってシルビアと軽自動車の間に車を停め、資料の入った封筒とバッグを持ち、車を降りる。

そして建物を眺めながら、つい愚痴っぽく漏らしてしまった。

「ここに3人で住んでるんだね……」

いかにも若い夫婦が子供と三人で仲よく暮らしているようで、彼女としてはやっぱりいい気がしない。

奏太はばつが悪そうに苦笑いする。

「でも、お互いの居住スペースはきっちり分けてるよ」

そうは言っても、一つ屋根の下だ。

風呂や台所だって同じだし、多くのプライベートな時間を私ではない女のそばで過ごしている。

「だからって嫌なもんは嫌」

奏太は私のだと確認しておきたくて、私は荷物を持ったまま彼に抱きつき口づけた。

ムキになってしまっているとはいえ、大胆な私の行動に、奏太は顔を緩ませる。