枕木チーフといえば、最近噂の新業務のことで何か揉めていると聞いた。
だけどSTVさぽーとこーる専任SVである私には関係がないし、機密情報の漏洩を避けるため、社内の人間でも必要がない限りはあまり話さない。
いつも余裕綽々のナルシストである枕木賢司にこんな顔をさせるほど、その業務の立ち上げは難しいのだろうか。
「お疲れさまです、チーフ」
「おー、お疲れ二人とも」
「お疲れさまでーす。枕木さん、疲れた顔もイケメンですねー」
枕木ファンのひとりである清香先輩がにっこり笑顔を向けると、チーフはハッと何か思いついたような顔をした。
私は無邪気な先輩に「あんまりこの男を褒めると調子に乗るからやめた方がいい」と言おうとしたのだが、その前にチーフが真剣な顔で喋りだす。
「二人とも、まだ三十路じゃなかったよな?」
三十路って……真剣な顔してセクハラか?
「まだまだピチピチの20代ですけど、それが何か?」
私が警戒しながらそう返すと、チーフは手に持っているファイルからバサバサ資料を探し始めた。
数秒後、目当てのものが見つかったのか手を止めて、少し黙読した後、私たちが座っているテーブルに資料を置き、自身も椅子に腰掛ける。
どうやらセクハラではなかったらしい。
「クライアントの無茶振りがあって、急ぎで人材を探している」
「それは、どんな?」
「年齢30歳以下。できれば美意識の高い美人。さらに長期間フルタイムで働ける、愛想のいい女性」
「条件厳しくないですか?」
「承知しているが、クライアントの意向だ。友達とか親戚とか、誰かいないか?」
枕木チーフの真面目な問いに、清香先輩と顔を見合わせた。
ああ、やっぱり神様っているんだ。
私は、少しシワの入った資料を眺めながら再確信した。



