くるまのなかで





私の仕事は、地元のケーブルテレビ『すずらんテレビ(略称:STV)』から委託されているコールセンター、その名も『さぽーとこーる』の運営である。

私はSVとして、電話に応対するコミュニケーターの育成や管理、クライアント、つまりSTVへのフィードバックなどを行っている。

「遅れてすみません」

普段より40分遅れて出社すると、同僚SVである岡山奈津(おかやまなつ)先輩が労うように微笑んでくれた。

「大変だったね。ケガがなくてよかった」

「ありがとうございます。変わったことはありませんでしたか?」

「ううん。今日は平和だよ」

奈津さんは声が高く、明るめのブラウンに染めたセミロングの髪が似合っていることもあって、実年齢よりずっと若く見られるが、実はもう三十路を越えている。

もうすぐ2歳になる息子がいて、現在は時短勤務中。

朝は8時半に出社して、15時頃に退勤する。

さぽーとこーるの営業時間は午前9時から午後9時までである。

私が出社するまでの午前中は奈津さん一人で、奈津さんが退勤してから終業までは私一人で運営するという形が通例になっている。

「お、小林。生きてたか」

背後から嫌な声が聞こえて、私は無意識に眉間にシワを寄せた。

無視したいところだがそういうわけにもいかないため、意識的にシワを伸ばして振り向くと、直属の上司である枕木(まくらぎ)チーフがニヤッと顔を歪めている。

ハッキリ言うが、私はこの男が嫌いである。