梶浦由美先輩は、とにかく美人だった。

すっぴんでも目がパッチリしててアイドルのようにかわいいのに、清香先輩ほどではない適度なギャルメイクが施してあって、キラキラ輝いていた。

実は奏太は高校1年生の頃、由美先輩のことが好きだった。

これは昔、奏太本人から聞いた話だ。

だけどモト先輩も由美先輩のことが好きだったし、由美先輩もすぐにモト先輩を好きになって付き合い始めたから、何もできないままあっさり恋が終わってしまったと、笑いながら話していた。

由美先輩は、私を可愛がってくれた。

私が勉強を教える代わりに、彼女は私に似合うメイクの仕方を教えてくれた。

私に似合う服を選んでくれたこともあるし、私はロングヘアよりショートヘアの方が合っていると教えてくれたのも彼女だ。

私は由美先輩を尊敬していた。

だから、奏太がかつて由美先輩を好きだったと聞いても納得するばかりで嫉妬などしなかったし、彼の見る目は確かだと思った。

そして、そんな彼が私を選んでくれたことが、嬉しかった。

でも今になって、心の奥に不安を抱えていたのだと気付く。

奏太が由美先輩親子と一緒に歩いているのを見たとき。

そして一緒に暮らしているのを知ったとき。

奏太がかつて彼女を好いていたことが頭をよぎった。

何もないと言われて全く信じられなかったのは、奏太にとって由美先輩が“アリ”だと知っていたからだ。