自分から煽って散々交わり、その間、数えきれないほど好きだ好きだと囁き合っておいて、今さら彼から逃げようなんて思ってはいない。

だけど、だからって彼女とその息子の存在を快く受け入れるのは無理だ。

離れて暮らしてほしい。

今すぐにでも。

そんな私の気持ちに気づいたのか、奏太が表情を引き締めた。

「由美とカズのことは、ちゃんと解決するつもりだよ」

「それは、同居を解消するつもりだってこと?」

奏太はこくりと頷いた。

「二人の新しい住まいとか、生活とか、ちゃんと暮らしていける環境を整えてからじゃないと無理だけど。梨乃に振られる前から、由美とはもう何度か話をしてる」

奏太、ちゃんと私のこと考えてくれてたんだ……。

独身証明書を持ってきたあの日、私は不安が拭えないことと、そのせいで幸せになれないことを理由に別れを選択した。

でも結局、会えばたまらずこうなってしまうくらい好きなのだから、私は安心や淀みのない幸福を諦めるべきなのかもしれない。

だってもう、奏太と共にいられない不幸になんて堪えられない。

「いつまで俺を待ってくれる?」

という問いに、私は軽くおどけてこう答える。

「次に素敵な出会いがある日まで」

奏太は複雑な顔をした。

こうは言ったけれど、私はきっといつまででも彼を待ってしまうだろう。