「いただきます」
お互いに手を合わせて、箸を取る。
白米、大根とひき肉の煮物、パプリカとピーマンをたっぷり入れた酢豚。
我ながら、好きな人に振る舞うには色気のないメニューだ。
「うまい」
という奏太の呟きにホッとする。
「それはよかった」
初めて手料理を食べてもらってドキドキ!
……とか思っていられるほど体力も乙女心も残っていなかったし、今さら料理できますアピールなんてするつもりもなかったから、マズいとさえ言われなければ御の字だ。
だけど料理ができない女じゃなくてよかったとは、心底思った。
「そういえば、おばさんの遺影、ないんだな」
「うん。遺影はしまってる。出してるとずっと監視されてる気分になるから、話しかけたくなるときだけ出すことにしてるの」
すぐ取り出せる場所にあるし、数日間出しっぱなしにすることもあるけれど。
「そっか」
「あ、そういえば、モト先輩のお墓参りには行ったの?」
「昨日行ったよ。由美と二人で」
由美という名前に、どうしても心が反応する。
今でも彼らは一緒に暮らしているのだ。
「あれ、息子さんは?」
「カズは昨日から父親のとこ。明日の夜帰ってくるんじゃないかな」
ということは、昨日は由美先輩と二人きりだったってこと?
ズンと胸が重くなる。