くるまのなかで


帰りの道では迷わなかった。

水がなくなった分荷物は軽くなったが、暑さは来たときよりも厳しくなっている気がする。

駐車場に戻ってきた頃には、少しだけ肌が赤らんでいた。

日焼け止めは塗ったけれど、不十分だったらしい。

車のトランクにバケツや空になったペットボトル、そしてゴミを積む。

リアゲートを閉めて運転席に乗ろうとしたところで、ふと目に文字が飛び込んできた。

『つめたい飲みものあります』

……なんて魅力的な言葉!

いかにも夏らしいのぼりだった。

のぼりを立てているのは、すぐそこにある喫茶店。

建物は民家っぽいし、看板も目立たない。

小洒落た雰囲気もなく、よそ者から見れば完全に住宅地に馴染んでいる。

のぼりがなければ店だと気づくのは難しい。

しかし、この絶妙な位置だ。

きっとこの墓地へ墓参りにやってくる人のオアシスになっているに違いない。

この後特に予定もない私は、ちょうど小腹も空いていたしラッキーだと思って店へと入った。