別れを迎えたのは、私が高校3年生だった年の夏。
「別れたい」
そう切り出したのは奏太の方だ。
気持ちが冷めきって険悪になってとか、何となくお互い連絡を取らなくなってとか、前兆など何もなく、突然だった。
当時奏太は高校を卒業して、就職も進学もせず、フリーターをやっていた。
高校在学中から自動車の整備士になりたいと言ってはいたが、そのためには県外にある専門学校へ通わなければならない。
両親とうまくいっていなかった彼は、どうしても親に頼らず自力で専門学校へ通いたいと、学費を貯めるために専門学校の受験を一年延期して、昼夜問わず働いていた。
私は夢に向かってひた走る彼の重荷だったのだろうか。
それとも飽きられてしまったのだろうか。
はたまたシンプルに他に好きな女ができたのだろうか。
知るのが怖くて、理由を聞かなかった。
別れたい。
静かに紡がれたこの短い言葉は、他のどんな苦難よりも私を深い絶望に陥れた。
だって、私はこんなに好きなのに、彼は私のことを好きでなくなってしまったのだ。
私など、今後の自分の人生に不必要だと判断したのだ。
彼が当時乗っていた軽自動車の中で、ただひたすら涙を流した。
それが彼との最後の思い出だ。
そしてその時の彼の車は、年式は違えど、現在の私の愛車と同じ車種である。
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