「梨乃ちゃんが笑顔なのはいいことだけど、そこまで浮かれた顔してると、クレームの対応で神経を使うコミュニケーターにしめしがつかないから、ね?」

それはつまり、あの男はわざと私をからかって不機嫌な顔にしたと?

それを周囲に聞かせることによって笑いを起こし、SVの私が眉間にシワを寄せていても「あれは枕木チーフにからかわれたから不機嫌なだけ」と明確な理由付けをすることによって、和やかな雰囲気をキープしていると?

……なんか手の平の上で転がされているみたいで悔しい。

だって、もしそれが本当なら、今まで彼が私だけを散々からかってきたのは、私が不機嫌な顔をしていてもコミュニケーターの人たちが気を遣わないように配慮するためだったということになる。

それはイコール、感情やストレスが顔に出やすい私を、この半年間、彼がずっとフォローしていたということになるではないか。

ありがたいことだけど大きな借りを作っているみたいで、すごく嫌だ。

「すみません……顔、引き締めます」

「で? 何があったの?」

奈津さんは期待に瞳をキラキラ輝かせている。

「まあ、それはまた落ち着いてから話すということで」

不満そうに頬を膨らます奈津さんに、苦笑いを見せる。

私だって、まだ信じられない気持ちなのだ。