恋愛経験など皆無だった当時の私は、この一件ですっかり奏太に惹かれてしまった。
後日このケンカがバレて職員室に呼び出されていた彼らを、
「先輩たちは私を助けてくれただけです!」
と必死にかばったのをきっかけに彼らのグループに気に入られ、奏太に声をかけられる機会が増えた。
「俺、ただのファッションヤンキーだよ。誰が一番強いとかは興味ない」
「別に俺、リーダーじゃない。教師が勝手にそう思ってるだけだろ」
学園でのイメージとは違い、実際の奏太はもの静かで、器が大きく、誰かのために怒ることはあるけど基本的には平和主義で優しい男だとわかり、ますます好きになった。
奏太の周囲に人が集まるのは、彼が強いからとか怖いからではなく、慕われているから。
金髪や茶髪の集団の中で、ひとり艶のある黒髪の奏太は見つけるのが容易く、視界に入る度に私の心を強く引きつけた。
「私、先輩のこと好きみたいです」
先に気持ちを伝えたのは私だった。
「じゃあ、俺の彼女になってくれる?」
そう言ったのは奏太だった。
関係が周囲に知れたときは、ヤンキー代表と特進クラスの学級委員、つまり秀才代表がくっついたと、学園ではちょっとした騒ぎになった。
まるでマンガのようなデコボコカップルだったが、私たちの関係は順調だった。
奏太は私を大切にしてくれたし、私はそんな彼が大好きだった。



