ひとまず安心した私に、奏太は小声で告げた。
「このまま、できるだけ急いで帰りな。俺ケンカ弱いから、守ってやれる自信ない」
「えっ?」
弱いって、あなた、一応リーダーなんですよね?
そういうのって普通、強い人がやるんじゃないんですか?
「ほら、早く」
優しく背中を押されて、ドキッとした。
不良グループのリーダーなのに、なんて優しい顔をしているのだろう。
初めて至近距離で見たけれど、なるほどなかなかキレイな顔をしている。
女子人気も納得だ。
私は言われたまま、石段を駆け下りた。
それから彼がどうなったかは見ていない。
石段を下りきった鳥居のところに、うちの高校の制服を着た茶髪の男子が一人立っていた。
知っている顔だ。
確か名前は本田基博(ほんだもとひろ)。
いつも奏太と一緒にいる2年の不良グループの一員である。
「お、来た来た」
彼は笑顔で手を振っていた。
どうやら私を待っていたらしい。
……なぜ?
「ごめんねー。下らない争いに巻き込んで。送ってく」
「えっ? でも今、上で……」
上で仲間が大変なことになっているのに、こんなところで何やってるの。
「あー、いいのいいの。あんたの安全の方が大事だって、奏太に言われてるからさ」
その言葉に、私はまた驚いた。
徳井奏太、なんという男だろう。
不良なんて自分たちの都合を押し付けて人に迷惑をかけてばかりだと思っていた。
だけど彼は、理不尽に巻き込まれた私の安全を第一に考えて行動してくれたのだ。
そうすることで自分たちが不利になるとわかっているのに。



