それはそうだと思う。


あたしだって目の前で亜耶に泣かれたりしたら、きっと困ってしまうだろう。


でもね、川上君は男なんだよ?


沢山の子が川上君を狙っているんだよ?


それに、川上君は亜耶の事が好きなんでしょう?


なのにどうして他の子にまで優しくするの?


どうしてあたしの家にすんなり上がるの?


そういうのが、誤解を生むんだよ?


言いたいことは山ほどあった。


川上君が来てからクラス内はやたら浮き足立ち、栞理たちのグループも鋭い視線を送っている時がある。


それなのに。


「困っちゃうよね」


あたしの口から出たのは、そんなどうでもいいセリフだった。