川上君に振られた翌日、あたしはいつもより少し早い時間に家を出た。


ケンジ君の件もあり、いつも通り登校すると栞理に掴まってしまうと思ったから。


別に栞理の事を嫌いになったわけじゃない。


栞理と近づいてみて、栞理は派手なだけじゃなくていい子だということもわかった。


でも、今日は栞理よりも亜耶と一緒にいたかった。


早足で教室へ入ると、まだ数人しか生徒たちは登校してきていなくて、その中に亜耶の姿はなかった。


あたしは肩を落とし自分の席に座った。


川上君はもう登校してきていて、あたしと視線が合うと「おはよう」と、軽く声をかけてくれた。


昨日あんなことがあったのに、いつもと変わらない様子だ。


あたしも、いつものように挨拶を返す。


気まずい雰囲気はどこにもなかった。


しばらくすると亜耶が教室に入ってきて、机に鞄を置くよりも早くあたしは亜耶に駆け寄っていた。


「どうしたの？　菜月」


いきなり抱き着いたあたしに対して亜耶は目を見開いて驚いている。