「急に低い声出したりして、ごめん。驚かせたよな?」


「べ、別に…私は何とも……」


「伊織と話してたのに、あの女たちが気安く話し掛けてきたから苛立ったんだ。本当、ごめんな。」


耳元で囁かれた私は、体を仰け反らせた。


「にっ、二回も謝らなくていいし!私は、特に気にしてないんだから。」


「それなら、いいんだけどさ…。」


さっきとは打って変わって、柔らかい笑顔を見せる瀬ノ内君。


その変貌っぷりに、目を見開いた。


なんなの、この違い…。


同じ女子なのに、表情にも言葉にも差があるのは何故…?


私、単に傘とハンカチを貸しただけの人間なんですけど。


うーん、謎だ。


訳が分からない…。


頭の中が無数の疑問符で埋め尽くされるのを感じた。