「陽希、取り込み中に悪いんだけどさ…」


「…何だよ。」


柏木君はバッグの中から一枚のチラシを取り出すと、瀬ノ内君に手渡す。


「前に話した、兄貴が経営してるカフェのチラシ、陽希に渡すように言われた。まだオープンしたばかりでバタバタしてるし、手伝えそうな時は来てもらいたい…ってさ。」


「ん、分かった。」


受け止ったチラシを見ている瀬ノ内君。


何気なく私も目を向ける。


次の瞬間…。


「あっ、フレンチトーストっ!!」


掲載されていた写真を見て、思わず声を弾ませてしまった。


スイーツが大好きな私。


その中でも、特に好きな食べ物がフレンチトーストだ。


美味しそう…。


チラシを凝視した私だったけど、視線を感じて周りに目を向ければ、瀬ノ内君と柏木君が口を開けて驚いていた。


「伊織、フレンチトースト…好きなのか?」


「えっと、ま…まあまあです。」


テンションの上がってしまった自分が恥ずかしくて、瀬ノ内君の質問に曖昧な言葉を返す。


「いや、今の反応は…どう見ても大好きでしょ。」


すかさず柏木君に突っ込まれ、頬が熱くなってしまった。