“男の子と付き合いたい”


そう願ってるわけでも、憧れてるわけでもないよ…私は。


瀬ノ内君だって、別に…女の子と付き合いたいって思ってるわけじゃないと思う。


私に話し掛けてきたのも、優しい笑顔を見せたのも、中学の時に傘やハンカチを貸したから。


そのことに対して、感謝してくれてるだけ。


ただ、それだけだ…。


今日の放課後、お礼の件を断りに行けば…もう瀬ノ内君と話すことも無いだろう。


同じ学年だから、その姿を見かけることはあると思うけど…。


接点は無くなる。


だから、運命でも何でもないんだって。


恵理子の妄想に過ぎないんだよ。


授業の開始を告げるチャイムが鳴り響く。


教材を抱えた先生が教室に入って来て、クラスの生徒が慌ただしくなる中…


私は、淡々と教科書とノートを机に広げていた。