「ちょ、ちょっと待ってよ!ドキドキさせた覚えは無いんだけど……」


「それは、由依の自覚が無いだけ。」


自覚と言われてもピンとこない…。


疑問符を浮かべていると、陽希は私の右頬に手を添えた。


「今日は、きっと記憶に残るよ。」


「えっ…」


「あの時より、もっと…甘く口付けるから。」


慌ただしく波打つ鼓動。


顔が熱く火照りだす。


「由依とキスしたい…。」


真っ直ぐ私を見つめながら発した陽希の言葉は、鼓膜を震わせた。


「そ、そこまで言うなら……いいよ。」


普通に“いいよ。”だけでいいのに、今のは上から目線もいいとこだ…。


こんな時ぐらい、素直な気持ちを自然と口にしたい…。


そう思っていると、温かいものが唇に触れて、直ぐに離れた。


「い、今の…」


「言っておくけど、今ので終わりじゃねぇから…。」


柔らかな笑みを浮かべる陽希。


ゆっくり顔を近付けると、そのまま優しく唇を塞いだ。