「あっ、そうだ。それより……はい」



突き出されたのは、ポッキー極細と書かれた箱。



「昨日の報酬な」



ああ、なるほど。脈絡なさすぎて一瞬なにかと思ったじゃん。


しかし。



「今回はえらく庶民的なのになったね」

「……毎回あんなもん、買えるかよ」



だろうね。金銭的にも、きっと精神的にも、ね。



「それに秋月、またいつ辞めるって言い出すかわかったもんじゃねーからな」

「えー? だからこそ胃袋掴むもんでしょーが」

「それは無理だろ。秋月の胃袋底なさそうだし」



しっつれーな。

それ、花の乙女に言うセリフじゃないでしょーが。



「……瀬戸がモテない理由、わかった気がする」

「それ、さっきの仕返し?」



ギロリと睨む瀬戸。


また怒った。ほんと短気だよね。


でも今回は瀬戸が悪いんだからね。


怒った瀬戸を無視してチャイムが鳴るまで寝よう。


あたしは机に伏せて、チャイムが鳴るのを待つ。


瀬戸はきっと今もこちらを睨んでるに違いないけど。


しっかりと受け取ったポッキーを抱きかかえながら、あたしは瞼を降ろす。すると同時に、少し遠くでチャイムの音が鳴り響くのが聞こえて、あたしはゆっくりと眠りに就いていった。