「さっき、携帯に連絡があって、リアルで電話がかかってきたから少し離席するって言ってた」

「離席?」

「パソコンの前から離れること。ログアウトしてないはずだから、船の中にいるはずなんだけど…」

 2人は甲板を見回すが、キャスケットの姿は見当たらない。

「まっ、そのうち来るだろう。ユイさんも、キャスケに呼び出されたの?」

「はい、丁度リアルフレとお好み焼き食べ終わって帰宅してたところに、メールをもらって。今日もログインするつもりでしたし、アレキサンダーさんにもまた会いたいと思ってましたから、二つ返事で(笑)」

「ありがとう(笑)キャスケから今日なにするか聞いてる?」

 ユイはアレキサンダーの言葉に、トレジャーバックから釣竿を取り出した。

「船釣りですよね?(笑)私、釣りなんてリアルでもしたことないんですけど、大丈夫かな」

 アレキサンダーは強そうなグラスファイバーの竿を手に持ち、「やってみればわかるよ」と余裕の表情で答える。

「キャスケはいつ来るか分からないから、釣り、始めてようか」

 ―――出航します―――

 テロップがそう流れると、ゆっくりと帆船が大海に向けて動き出した。