地球時間   12:50
太陽神界時間 10:03

「そろそろかな」

 ユイは新しいレギンスで白い砂浜をジャングルに向かって歩き出した。

「キャスケットさん、私のあたらしい装備に気づいてくれるかな」

 初心者エリアの小さな島を出て、この大陸についてから地球時間で三日目の夜に、
キャスケットから2通目のメッセージを受け取った。

『コロナタ森林に行ってみない?私はいつでもいいからよかったら、地球時間で待ち合わせの日にちと時間を送ってね』

 コロナタ森林は港町を北に行ったところにある。

 待ち合わせ時間は今日の13時。

 場所は『コロナタ森林』に入って最初の標識のあたり。

 ユイは一度、砂浜の上で立ち止まった。

 ログインする前にネット上に公開されている『オートマトン -Online-』の攻略のホームページで、この先のジャングルの中に出現する敵の強さを調べてきたのだが、多勢で襲ってこない限りは、なんとかユイでも倒しながら進めそうだった。

 ユイは森林の高い木から何本も垂れ下がったツタごしに、薄暗いジャングルの中を覗く。

 視界は想像していた以上に悪い。そのうえ足場はぬかるんでおり、至るところで大木の根っこが怪物の手のように地上にうねうねとその肌をむき出しにしている。

 それはまるで森林に捧げられた生贄を逃すまいとしているかのように見えた。

「!!!」

 ユイは突然、森の中から響いた爆発音に身を硬く縮めた。

「な、に?!」

 息つく間もなく、続いて人々の悲鳴が森林の外まで聞こえてきた。

 脳裏に一抹の不安がよぎる。

 キャスケットさん?

 恐怖を感じる余裕もなく、ユイはジャングルの中へ身を投じていた。