「……ちょっ、竜っ」
「えっ……」
合図通りに目を開けた私に、なぜか近づいてくる宙の顔。
それは見事で、一瞬の出来事だった。
一瞬だけ私の唇に触れた宙の唇。
紛れもないキスだった。
目をつぶる暇もなく、見つめ合ったまま。
しばらく私も宙も放心状態だった。
泣き真似をしている小人と森の動物たちは顔を伏せているから見えていないはず。
そんなすすり泣く声の中、微かに笑い声が聞こえた。
それは……
たっくんとすみれの声。
宙もその声が聞こえたようだった。
今のキスのせいですっかりセリフが頭の中から飛んでしまった私。
…どうしよう。
次、なんだっけ……



