ただでさえ人目のつかない離れたトイレ。
何人かすれ違ったが、嫌がる私を見ても助けてくれようとした人はいなかった。
誰か、誰か助けてよっ。
助けを求めたくても、恐怖心のせいで上手く声が出ない。
そんな私を横目に笑っている男。
宙もこんな人ならいいのになんて、そんなのウソだ。
こんな人たちより、宙の方が全然いい。
ケンカばかりだけど、素の自分でいられる宙がいい。
───宙、助けてよ。
仮にもアンタ、私のウソ彼氏でしょっ?
私の目に涙が浮かぶ。
「おい」
涙で滲んだ世界に、聞き覚えのある声がした。
ついさっきまで聞いていた、あの人の声。



