「トイレってどこにあります?」
……え?
と、トイレ。
身構える必要なんてなかったじゃん。
「あぁ、トイレですね?ここからだと……」
長年住み続けているこの街のショッピングモールは知り尽くしている。
道案内ならおまかせあれ。
指を指しながら、好青年にトイレの場所を説明する。
「ごめんなさい。僕、方向音痴で……そこまで案内してくれませんか?あ、それとも誰かと待ち合わせとかしてました?」
「い、いえ。いいですよ」
一瞬宙のことが頭をよぎったけれど、別に待ち合わせているわけでもないし、勝手にいなくなったのは宙だ。
私には関係ない。



