「宙が離れなさっ……」
文句を言ってやろうと、私は首を横に向けた。
周りが見えないほどドアップに映る宙の顔。
宙も私の方を向いていた。
思っていたよりも私たちの間は狭かったよう。
「そ、宙が離れなさいよっ!!」
サッと顔を戻して、俯きながら言う。
───なんで。
なんでドキドキしてんのよ。
〝ドキドキは恋の始まりだよっ?〟
そんなすみれの言葉がフラッシュバックする。
恋……?
そんなバカな…。
ありえないって。
このドキドキは何かの間違いだよ。
けれど、顔の火照りが間違いじゃないことを証明しているかのようだった。



