「なに」
口パクで竜也にそう伝えると
「なんでもない」
と同じく口パクで返ってきた。
とはいうものの、その視線がなくなることはない。
ったく、やりにくいな。
それからしばらくして、やっと長い髪が乾く。
「よし、終わった。もういいよ」
「ありがと、宙」
「ん」
それだけ交わして、俺はドライヤーをしまいに行く。
本当にサラサラだよな、茉奈の髪。
それに漂うシャンプーの香りがとてもいい匂い。
なんか落ち着く。
……って変態かよ、俺。
そういや最初は〝変態〟って追い出されたよな。
1週間も経てばもう習慣づいてしまったのか、何も言わなくなった。



