「思葉」
「なに?」
「おまえ、永近の匂い袋に何か手を加えたか?」
「は?それってどういう……」
聞かれていることの意味が分からず、思葉は出した部屋着を抱えて振り返る。
しかし、質問は最後まで告げられなかった。
突然、左腕に激しい痛みを感じたのだ。
外側からでなく内側から、筋肉や骨の筋に沿って痛みが噛み付いてくる。
「っ!?」
思葉は部屋着を落として左手首を掴んだ。
瞬間、痛みがさらに強くなり軽い目眩を引き起こす。
足元がふらついてバランスを崩し、すぐ側にあった全身鏡を巻き込んでその場に崩れた。
とっさに両手が床に伸び、左手が先に倒れた鏡面に触れる。
冷たい、それを感じた直後、ナイフを突き立てられるような痛みが脳天まで一気に貫いた。
視界が一瞬真っ白になる。
「いたっ!!」
思葉は左腕を抱えてうずくまった。
脈拍に合わせて激痛が深く食い込んでくる。
まるで突き立てられているナイフで肉を好き勝手に抉られているような感覚だ。
目尻に涙が盛り上がり、胸が圧迫されて呼吸がしにくくなっていく。
「痛い、痛い!腕、がっ……痛っ!」
「思葉!」
玖皎が駆け寄り、床に張り付いて涙を流す思葉の身体を起こそうとする。
けれど、左肩に触れられただけで新たな痛みが加わった。



