雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕






階段をのぼる途中で、玖皎の機嫌が悪いまま出てきたことを思い出した。


さすがにもう直っているとは思いたいのだが、不安である。



(……これで不機嫌だったら、どうやって直させようかな。手入れだけでいけるかな)



今朝のあの殺気混じりの表情を思い浮かべ、思葉はかるく額をさする。


開けた途端八つ当たりを喰らうような展開だけはなっていてほしくないと祈りつつ、ドアノブに手をかけた。



「ただいま、玖皎」


「ん、おかえり」



部屋の奥で胡座をかいていた玖皎が顔を上げる。


声も顔つきも普段通りに戻っていた。


広げているハードカバーの本の続きが気になるのか、それだけを言うと紙面に目を落とす。


どうやら、もう心配なさそうだ。


思葉は気づかれないようにそっと安堵の息をついて鞄を降ろす。


明日提出のアンケート用紙を学習机に出し、その上に吊るしてあるコルクボードに新しい時間割と年間の行事予定表を貼った。


配布物のチェックを済ませ、保護者向けのものを先にダイニングテーブルへ置きに行く。


部屋に戻り、諸々の整頓を終えても、まだ永近は帰ってこなさそうだった。


ワゴン車は停めてあったから遠くへ行ったわけではないはずだが。



(先に晩ご飯の支度しておこっかな)



回答したアンケート用紙をファイルに挟み、思葉は匂い袋を首から外した。


部屋着に着替えようとクローゼットに向かう。


そのとき、玖皎がひょいと顔をあげた。