2人で並んで歩き出す。


たまに登校途中で一緒になることはちょくちょくあったけれど、一緒に帰るのはかなり久しぶりだ。


思葉が帰宅部で先に帰ってしまうのと、そもそも家の方角が違うのが原因だ。



「思葉ちゃんは塾ないの?」


「うーん、おじいちゃんは特に行けとか何にも言わないかなぁ。


そんなところに金を注ぎ込まんでも、人並みの学習なら家で自分でやれば十分だってね。


あ、もちろん家でサボってたら怒られるし、模試で赤点ギリギリだったら勉強のやり方を見直しなさいって言われるよ。


それ以外は、まあそこまで言ってこないかなぁ」


「いいなー、理解ある身内で、絶滅危惧種だよそんなの」



実央が大げさにため息をついて、ハンドル部分に寄りかかる。


カゴに載せてある鞄から、分厚い英語の参考書がちらりと見えた。



「ウチなんてうるさいんだよ、めちゃめちゃ。


こんな成績じゃ偏差値の低い大学しか行けないからもっと勉強しろって。


あたし、別に頭のいい大学に行こうとか考えてないし、親の言う『まっとうな人生』って堅っ苦しくて嫌なんだよねー」


「まっとうな人生って?」


「いい大学に入って、年俸のいいところに就職して、いい男捕まえて家庭を築く」