そのとき、目の前を眩しい光が一閃した。


それが何なのかを考えるより早く、手のひらに焼け付くような熱が噛みつく。



「痛っ……!?」



思葉は足を止め、腕を引っ込めて左手首をおさえた。


手のひらを見ると、感情線に重なるようにして赤い線が走っている。


しかし、それは瞬きをした直後――消えた。


おぼえたはずの痛みも掻き消えている。


目を凝らしてみても、触ってみても、手のひらの肌は無傷できれいだった。



(え……今の、何?)



戸惑いが脳内を駆け巡る。


心音が速まり、冷や汗がにじむ。



「皆藤さん」



突然声をかけられた。


ハッとして顔を上げると、いつの間にか目の前に矢田が立っていた。


こうして彼女と対面するのは初めてだ。


そばかすの目立つ、純朴そうな顔立ちをしている。


矢田はじっと思葉を見つめていた。


その双眸には優しげな光を宿しているが、どことなく不気味さを感じさせる。


しかも目線が、思葉を見ているようで見ていない、遠くを見ているような感じがした。


ぞくり、と、悪寒が走る。



「皆藤さん……どうしたの?何かわたしに用事?」



矢田が軽く首を傾げる。


怪しげな光が水面のように揺れ動く。