練習場所は近くの神社に立つ欅(けやき)の木だった。


來世がいともたやすく登ってみせるから簡単そうだと思ったが、実際にごつごつした木の皮に触ってみたとき、とても難しいのだと感じた。


経てきた年月の表れである幹の瘤や虚に手をかけたものの、そこからどう動けばいいか分からず、数分間固まってしまい、結局地面に戻る。


それを何日か繰り返し、どうにか片足をでっぱりに引っ掛けられたと思えばまたそこで停止。


上達速度はこんな感じだった。


しかも挑戦し始めたのは小学校に入学してしばらく経ってから。


当然学校がある日や雨の日は練習できず、日が空いてしまうとまたしがみつくところからやり直さなくてはならないときもあった。


いくら教えてもこんな調子では、どんなに気長な者でもうんざりするだろう。


けれど、來世が思葉に文句を口にしたことは一度もなかった。


むしろ思葉が上達しないのは自分のせいだと言い、謝ってくれたほどだ。


途中で申し訳なくなって諦めようとしたが



「そう思うなら早く上手くなれよ」



と言われてしまい、その後も教えてもらうことになった。