「ねー、あんなんだからいつまで経ってもフラれてばっかりなんだよ。


あたしのこといろいろ言ってくるけど、あいつも大概だよね」


「あいつって、そんなに惚れっぽかったか?」


「どうだろ、告白した回数はそこまで言うほど多くはないよ。


でも思ったことをすぐにぽろぽろしゃべるから、あんまり考えないやつとか、ちょっとデリカシーないやつって思われてて、それで玉砕食らってるね。


もう少し行哉くんみたいに静かにしていられれば、落ち着きがあってOKしてもらいやすくなると思うけど」



半年前、同じ部活の3年生の先輩に告白し、見事にフラれた來世を思い出す。


フラれた理由は『なんかチャラチャラしてるから』、そんなようなことだった気がする。


自分の気持ちを素直にしゃべりすぎるのも考え物だ。


そこの匙加減が、簡単なようでなかなか難しい。



「まあ、來世はあんまり深く考えずに話すところあるよな」


「それがチャラいって感じる子もいるみたい。


でも、行哉くんは女子にモテそうだよね、大学で彼女できたでしょ?」



ふいに行哉の足がぴたりと止まる。


いつの間にか『骨董品店 満刀根屋』の裏に到着していた。


日に焼けた白いワゴン車を停めている駐車場と蔵に挟まれた狭い庭の奥に、勝手口のドアがある。


表通りに面している方が店になっているので、思葉はいつもこちらから出入りしていた。



「そんなもの、作る暇も作る気もあるわけないだろ」



ぶっきらぼうな言葉と共に腕をつき出され、反射的に両腕で抱えるように荷物を受け取った。


表情を見る間もなかった。


じゃ、と踵を返した行哉の背中がスタスタ遠ざかる。


すぐに隘路を曲がって見えなくなった。