褐色の手が來世の頭を引っぱたき、ついでに旅行鞄を押し付けて歩き出した。
來世は空いていた両腕でそれを受け取る。
どちらも自然な動きだった。
そのやりとりを見て、思葉は行哉の背が來世よりやや低いことに気づいた(それでも思葉にしてみれば十分に高いが)。
こてりと首を傾げながら問う。
「あれっ、來世って行哉くんより大きかったっけ?」
「何が?」
「身長」
思葉は片手を水平にして頭の上にかざす。
行哉と來世は顔を見合わせ、來世が少しだけ顎を引いた。
「……あ、言われてみれば本当だ。
行哉今いくつあんの?
大学って4月に入るとすぐに健康診断あるんだよな。
おれは身体測定まだだけど、多分180はいってると思うぜ」
「……177だったな、確か」
束の間、行哉が思い出す素振りをみせて答える。
すると來世がなぜか笑った。
「あははっ、悪いな行哉、弟が兄の身長追い抜いちまって」
「別にいい」
「えっ、マジで?
兄として弟に見下ろされるの屈辱とか、そういうのないのか?」
「身長には拘わっていないからな」
「あれ、そうなの?
あ、これってもしかして、おれのほうが兄ちゃんに見える可能性あるか?
期待していいやつ?」
「そんなわけないでしょ、どう見てもこっちのが上よ」



