「大丈夫か?」
上から声が降ってくる。
思葉の身長は150センチあるかないかくらいなので、小学生や中学生、いわゆる子ども以外の人の声は頭の上から届いてくる。
声はややぶっきらぼうで、低い音色だった。
左胸の奥がひゅっと縮こまる。
知らない人、特に異性の声を聞くのは少し怖い。
声だけでなく、目を合わせたり触れたり、とにかく関わること自体が苦手だ。
相手の内面にある、自分に向けられる感情や思惑に怯えてしまう。
倒れかけたのを支えてくれるためでなかったら、この筋肉質な手も振り払っていたかもしれない。
「っす、すみません。前見てなくて……」
思葉は動きやすそうなシューズを履いた相手の足元を見て謝った。
こんな状況で相手の顔などとても見れない。
だが、普段よりもあまり怖がっていなかった気がする。
それに気づいたのはもちろんしばらく経ったあとで、このときの思葉の頭はちょっとしたパニックに陥っていた。
見知らぬ人に迷惑をかけてしまった。
それだけで心が一気に落ち着かなくなる。
足場を失くした宙ぶらりん状態だ。
相手の反応に少し緊張する、怒られなかったとしても文句の一つや二つはぶつけられるだろう。



