玖皎はまだ何か言いたそうだったが、口をへの字に曲げつつも人型を解いた。
よほどのことがない限り思葉のお願い(と言う名の命令)は素直に聞く妖怪である。
そこが少しかわいいので憎めないやつだ。
(なんて、自分の50分の1程度しか生きてない子どもに思われてたら嫌がるよね)
だから口に出してはやらないが。
玖皎を肩にかけ直し、電車が来なくても人の多いホームを歩く。
階段までの距離が妙に遠く感じるのはなぜだろうか。
「まったく、おまえたち女子の服装の感覚は分からん。
そんな恰好なぞ、脚をひどく出しているも同然ではないか」
「だーから平安基準で考えないでよ、今は平成なんだからさ」
「またおまえはそう言う。
平安だろうが平成だろうが、はしたないものははしたないのだ」
「へえ、じゃああの恰好はどうなの?」
思葉は待合喫煙室にいる、大学生らしい若い女性をちょいちょいと指差した。
まだ肌寒い季節なのに、もう素足にデニム地のとても丈の短いショートパンツ姿だ。
春を通り越して夏みたいな服装だ、季節の先取りにも程がある。
「なっ………んだあの恰好は」
予想通り、玖皎が驚きつつもどうにか言葉をつなぐ。



