甘ったるいような、それでいて錆びた鉄のような不快な臭いである。
ついでに、今まで気がつかなかったのだが、咀嚼音に似た妙な音が臭いのする方から聞こえてきた。
轉伏たちのさらに後方で、誰かがこちらに背を向けてしゃがみこんでいた。
腕の動きを見るに、地面に落ちている何かを掴んでは口へ詰め込んでいるみたいである。
首を伸ばして、思葉は見たことを激しく後悔した。
その地面は真っ赤に染まっていた、夥しい量の血が水溜りをつくっている。
そして同じように生々しい赤色の物体が転がっている……恐らくは何かの肉だろう。
しゃがみこんでいる人はその肉塊を掴んではぶちぶちとちぎって食していた。
飛び散っている肉片も拾っては口に放り込む。
「ひっ……!」
「思葉?」
短く悲鳴を上げて背を向けた思葉に玖皎が首をかしげる。
それから主人が見ていた方向へ視線をすべらせると、僅かに眉間にシワを寄せた。
「……そういえば悪食の阿毘がいたような気がしていたがあいつだったか。
おい、何とかならないのか、あれは」
阿毘へ顎をしゃくる玖皎に轉伏は肩をすくめる。
「そう言われても、あれは大事な霊骸処理の仕事なんだよ。
どんな霊骸でもそれを放置してそこらにふらついている他の霊にでも食われて力を蓄えられたら害にしかならないでしょ?」
霊骸、ということは、やはりあれは普通の人間の目には映らないもののようだ。
しかし残念ながら、思葉にはそれが見えてしまう。
玖皎が大きなため息をついて前髪を掻き上げた。



